登記権利者は、登記義務者の所在がしれないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することが出来ない時は、非訟事件手続法に規定する公示催告の申し立てをして、除権決定を得ることにより、単独で登記の抹消を申請することができます。
この方法は、休眠担保権だけでなく、登記義務者が行方不明となっている地上権など(いわゆる休眠用益権)についても利用することができます。
登記義務者の所在が知れないこと
抹消登記の申請であること
除権決定を得るため疎明する資料があること
実体法上、権利が消滅していること
登記義務者の所在が知れないかどうかは、公示催告の申立人の主張・立証に基づき公示催告の申立てを受けた裁判所が判断するが、結局のところは、「完済した資料・証拠を登記所に提出する方法」や「債権額の金額を供託する方法」での「担保権者が行方不明であること」と違いはありません。
◆個人の場合
個人の場合は、配達証明付郵便を送付して「不到達」であることが「行方不明」にあたります。したがって、登記記録上の住所から、戸籍謄本、住民票の写しを調査し、そこから判明する住所地には、郵便を送付する事になります。
時に、抵当権者やその相続人が行方不明である方が、手続きとして容易で、逆に発見される方が手続きとして大変になってしまうケースがあります。そんな場合は「行方不明である」として手続きを進めていくわけには参りません。融通が利かないところではありますが、法律を扱う専門家として、逆に抵当権者の権利を奪ってしまうことになるからです。
◆法人の場合
法人の場合には、まず登記所で法人の登記事項証明書がないか調査します。ここで登記事項証明書や閉鎖事項証明書が取得できると、それは「行方不明」には該当しません。登記事項証明書や閉鎖事項証明書などの登記記録が見当たらない場合に初めて「行方不明」として認められますが、そのようなケースは稀なため、法人の場合には、この手続きを採る事は難しいと言えるでしょう。
この方法により単独で抹消することができる登記は、抹消登記に限られ、移転登記、設定登記、変更登記、更正登記では利用することはできません。
除権決定を得て休眠担保権を抹消する場合、被担保債権又は担保権が、実体法上、消滅してることが必要です。例えば、「抵当権設定契約を解除している」「被担保債権(ローン)を全て完済している」という事情が必要になります。
よくある相談事例としては、ある時まではローンを返済していたが、途中から辞めてしまって、10年以上経過してしまった場合がありますが、このような場合は、消滅時効にはかかっておりますが、「もう消滅時効にかかってますので、払いません」という旨を相手に通知(消滅時効の援用)して初めて消滅時効の効果が及ぶため、実体法上は、まだ権利が消滅していません。
除権決定を得るためには、公示催告を申立てますが、それには権利が消滅していることを疎明するための資料が必要となります。具体的には完済証明書、償還表、契約書、領収書、時効援用の通知書(謄本)などになります。
除権決定を得る方法は、訴訟に比べて手数料が低く、申立人が裁判所に出頭しなくていいので、負担が少ないのがメリットです。
しかし、この方法を採るための条件をクリアするのがなかなか難しいため、実務上、この方法を用いて休眠担保権を抹消することあまりありません。
また、被担保債権であるローンが消滅時効にかかってた場合は、前提として消滅時効の援用しる必要があり、援用をするためには相手に通知が届かないといけないため、消滅時効援用の意思表示の公示催告を申立てて、それから除権決定の公示催告を申立てるという事になります。これでは、抵当権抹消訴訟を提起した方がはるかに速いので、私自身、除権決定による休眠担保権の抹消は、あまりお勧めできないと思います。
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